2011年5月30日月曜日

グリーンブック ライゲルース教授の講演

_Prof. Reigeluth Lecture meeting in Ritsumeikan University


2011529日にProf. Reigeluthの講演会が立命館大学で行われ参加してきた。ID理とんとモデル研究に関してまとめられた、3冊の本は、IDを学ぶ者にとって、知らない人はいない、あのグリーンブックの執筆者である。熊本大学の鈴木先生が、通訳をされるということで、安心して参加した。実際には根本先生がほとんど通訳してくださいました。

講演の内容は、The Future of Instructional Theory (ID理論の行方)という、大きなテーマであった。具体的には、インストラクショナルデザインにおけるパラダイムシフトについての概観、教育現場で起こっているパラダイムは何か、新しいパラダイムのサブシステムとは何か、新しいパラダイムのID理論とは何か、新しい技術の役割は何かについて、途中質疑応答を行いながら、3時間の講演になった。当初予定されていたアジェンダでは、Prof. Reigeluthの講演の後、鈴木先生との対談が予定されていたが、活発な質疑によりポストポンされてしまった。

Prof. Reigeluthの講演は、日本人にもわかるような英語で話してくださったので、私でも理解できる内容であった。教育を取り巻く環境変化に応じて、パラダイムも変化する。パラダイムが変化するのに合わせてID理論も変化する。本講演で取り上げられた、新しいパラダイムのID理論として主要要素に取り上げられたのが、プロジェクト型学習と、インストラクショナル支援についてであった。以下のその超概略を記載する。

プロジェクト型学習は、パフォマンスベースの学習や、課題解決型の学習を含んで、グループで協同して学習していく。プロジェクト型インストラクションの方法として、適切なプロジェクトを選ぶこと、グループを作ること、チューターは高次の学習をファシリテーとする、真正な評価をすること、徹底することなどを挙げられていた。

もう一つの新しいパラダイムのID理論として取り上げられたインストラクショナル支援については、プロジェクト型学習を実施しながら、学習者が行き詰るさいの支援方法を示している。学習者が学んでいる学習領域に応じた、インストラクションの戦略を考え、インストラクションを施していく仕組みが必要である。ただ単に、プロジェクト型学習を行わせれば、全ての学習者が同じように学習が進むわけでは無い。また、学習者には得手不得手がある。個々の学習者が学んでいる領域により、学習促進のためのインストラクションの戦略を検討し、学習項目にあったインストラクションによる支援が必要になる。」個々の学習者に対応して、また、個々の学習領域に応じてインストラクションの支援が求められる。

このような学習支援の出来るテクノロジーも重要で、多くのものが開発されてきているが、それぞれがバラバラな発展をしてきているので、これらを統合し、使い勝手の良いものにまとめ上げる必要がある。

 というような内容で、これでは端折り過ぎかもしれませんが、大体の内容を網羅しているのではないかと思います。新しいパラダイムにおける新たな役割として、学習は学習者主体であるという考えのもとに、学習者は自己主導型学習(自己調節学習と同意ではないかと思います)にならなければならない。学習パートナーの存在が重要である。学習を中心とした技術の統合も必要である。学習者を支援するデザイナーやファシリテーター、メンターの存在が必要である。という主張をされていました。

 企業教育において、これらは大変重要なことであると思います。日本の場合は、高等教育において、徐々に社会構成主義に基づき、学習者主体という言葉が少しずつ理解されだしてきています。これを機に、学習者主体である学習論議のうねりが大きくなるといいなと感じています。企業の人材育成などは、まさに学習者主体でなければなりませんし、成人学習に基づくものでなければなりません。また、個々の学習者は自己主導型学習者にならなければ、Life Learningは起こらないでしょう?!?

以下、本講演に先立って送られた講師紹介を転記(一部省略)しました。
講演者紹介:
教育デザインとテクノロジーを専門とする研究者であり,教育工学の研究分野として教育設計(InstructionalDesign)の領域の確立に多大なる影響を与え続けてきたことで知られている.自身が提唱した精緻化理論(ズームレンズモデル)で長期間にわたる教育設計手法の先鞭を切ったことに加え,彼が編集した「ID理論とモデル」(通称グリーンブック)三部作は世界各地の多くの大学院でテキストとして用いられてきた。

熊本大学大学院教授システム学専攻長・教授。フロリダ州立大学大学院留学中に発行されたグリーンブック第一巻をテキストとして学んでからのライゲルースファン。以来、研究内容・方法に色濃くライゲルースからの影響を受けてきた。20056月には,放送大学大学院科目「人間情報科学とeラーニング’06」の取材でインディアナ大学を訪問しインタビューに応じていただき、その素顔を番組の中で紹介した。
 
名称:ライゲルース教授講演会
主催:熊本大学大学院教授システム学専攻
日時:2011年5月29日(日)14:00-17:00
場所:立命館大学衣笠キャンパス至徳館

アジェンダ:
14:00-15:30ライゲルース講演「教授理論の新しいパラダイム:グリーンブックIIIの編集を終えて」
15:30-15:45(休憩+質問集約)
15:45-17:00ライゲルースとの対談「ライゲルース教授の業績に学ぶこと」
聞き手・通訳:鈴木克明(熊本大学)

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